またお会いできてうれしく思います。1時限目ちょっと内容が豊富すぎたかも知れませんが、「e-ビジネス」を取り巻く最新の状況が理解できたと思います。
今回は、私が勤務する「決済業務部」の実際の業務について講義します。がんばって受講してください。
2時限目では、決済業務部の主要な業務について、事例をまじえて理解してもらいます。みなさんに考えてもらう質問も、実際の銀行業務に即したものとなっています。いわば、e-ビジネスの実践講座です。それではさっそく、当行の決済業務部へご案内しましょう。
ようこそ、決済業務部へ。まず最初に、私たちの主要な業務と、他の銀行業務との関わりについて講義します。さあ、決済業務部をノックしてください。
私たち決済業務部の役割をご紹介します。資料1をクリックしてください。
資料-01
決済業務部は、「e-ビジネス戦略の企画・立案」、「法人向けサービス、決済に関する商品開発」、「営業推進」の三つを主要ミッションとし、必要に応じて他の部署やグループ会社と協力して、e-ビジネスへの取り組みを進めています。
また、決済業務部はトランザクションビジネス本部の一つとして活動しています。資料2をクリックしてください。
資料-02
トランザクションビジネス本部は国内外の法人のお客さまの多様な決済ニーズおよび付随するファイナンスニーズに対応するため、国内外の各部専門スタッフが集結し、付加価値の高い情報提供、システム商品やソリューションの提供を弛まず提供していくことを目指しています。
決済業務部は、ユニット各部と協力して益々、高度化、多様化する企業のニーズに対応すべく、高付加価値商品の開発サービス提供に取り組んでいるのです。
このSTEPの最初で、決済業務部は必要に応じて他の部署と協力するとお話しました。この点は重要です。私たちの仕事は、あくまでニーズに応じたe-ビジネスを研究し、企画・開発することであり、実際にサービスをお客様に提供するのは各支店や法人営業部など他の部門なのです。私たちの仕事の流れを簡単に説明しましょう。資料3をクリックしてください。
資料-03
これは主に法人向けサービスの業務フローですが、個人顧客向けサービスでも本質は変わりません。顧客のニーズに対応することで、個別のe-ビジネスが始まります。もちろん、新たな技術や市場の動きを常に研究していますが、それもニーズに即応する企画を行うためです。e-ビジネスの企画・開発には、現場とのチームワークが不可欠なことを知ってください。
次のSTEPでは、個人向けサービス分野の最新の業務について勉強しましょう。
一般の個人顧客に向けたe-ビジネスは、銀行の個人戦略の一環をなす重要な業務です。顧客ニーズやメディアと共に進化する、個人向けサービスの最前線を学びましょう。
個人向け金融サービスでは、一般の消費者に向けたサービスを企画・開発します。ここで留意したいことは、個人向け金融サービスは数千万人の個人のお客様を対象とするため、一人一人にあわせたカスタマイズが難しいということ。逆に法人向け金融サービスでは、それぞれ企業の個別のニーズにあわせたサービスを作ることができます。
個人分野のサービスでは、まず消費者の基本的なニーズに応える機能が求められます。基本的なニーズとは、日常的なニーズと言い換えてもいいかも知れません。たとえば財布に小銭が多くて困るとか、代金の振込に銀行窓口に行くのが面倒とか、日常感覚を大事にしてサービスを検討することが、個人分野の商品開発で特に求められます。こうした日常的なサービスを基本に、個人に向けたより特化したサービスを企画し提供していくのです。
1時限目でも紹介した「SMBCダイレクト」は、最初に私たちが作った頃はまだ特別なサービスでした。それが、様々なメディアを統合することでより便利になり、いまでは一般的なサービスとなって多くのお客様にご利用いただいています。このようにサービス自体の利便性を高めていくのも、個人向けサービスの企画です。
「SMBCダイレクト」は、当初はインターネットによる資金振込・振替や残高照会など、簡単なサービスだけを扱っていました。それが、電話やモバイルを取り込むことで音声を利用したサービスが可能になり、現在では窓口とほとんど変わらないサービスも提供できるようになりました。たとえば、資料4をクリックしてください。
資料-04
この様に個人向けサービスはサービス機能の拡充を進め、利便性を強化することで契約者数や取引の増加につなげています。実はこうした個人取引の拡大は、法人向けサービスとも無関係ではありません。資料5をクリックしてください。
資料-05
1時限目の講義の中でBtoCという用語を勉強しましたね。
そう、企業と消費者(個人)の取引をBtoCと呼ぶのでしたね。この例は、BtoCにおける法人向けサービスの一部です。個人向けサービスの利便性が向上し、個人の取引が増えれば、その個人を顧客とする法人との取引もまた広がることになるのです。
ここでは個人取引の拡大に対応した、新たな法人向けサービスの一例をご紹介します。資料6をクリックしてください。
資料-06
現在、クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済から、さらにはスマートフォンの普及やITサービスの進化、仮想通貨の普及などにより、非対面化決済も急速に進んでいます。個人取引の決済手段が多様化する中で、 BtoCの企業は、それに対応したシステムを構築しなければなりません。「SMBCマルチペイメントサービス」は、企業の業種・業態に合わせた多様な決済手段を一括で提供できるサービスです。個人取引の拡大が新たな法人向けサービスを創出した一例と言えます。
法人向けサービスの提供は、企業のEC(電子商取引)を円滑にするとともに、企業の経営課題を解決していく大きな効果があります。日本経済の活性化にとっても重要な意義を持つ、法人向けサービスの商品開発について学びましょう。
1時限目のSTEP2で、企業の電子商取引を円滑にするには決済、与信、認証といった金融機能が不可欠だと講義しました。
こうした幅広い金融機能を企業のニーズに合わせて組み合わせ、企業ごとに最適のソリューションを設計することが法人向けサービスの企画・開発の基本です。ここでは、業界による支払い慣習の違い、企業の個社事情にあわせたカスタマイズが必要になります。この点が個人向けサービスとの大きな違いです。
また、これらの金融機能の全てを当行だけで提供することはできません。そこでグループ企業が持つ機能を最大限活用して、適切なサービス、いわば決済ソリューションを提供することが重要です。資料7をクリックしてください。
資料-07
企業のニーズは、電子商取引の面ばかりではありません。
企業がIT化を進める大きな目的は、「業務の効率化・迅速化」です。企業の経営課題として企業組織内部のマネジメントやカバナンス(企業統治)の効率化が重視されていると見ることもできます。
また、近年ではシェアードサービスという経営手法を取り入れる企業が増えてきています。
資料8をクリックしてください。
法人向けサービスの企画・開発においては、このような企業の高度なニーズに対応する、いわば経営課題解決型のソリューションを考えていくことが、極めて重要なのです。
資料-08
シェアードサービスセンター(SSC)とはグループ内企業の間接業務を一括して管理する組織のことです。近年、多くの日本企業が経営手法として取り組みを始めています。事業はコアビジネスに専念し、戦略本社は経営戦略の策定・推進に専念、そしてSSCは間接業務をグループ化することで品質を向上。この三者が一体となることで、グループの企業価値を向上されることができると言われています。
以上のような視点で、決済業務部では様々な法人向けサービスを開発し、企業にカスタマイズして提供しています。その代表的なサービスの一部を紹介しましょう。資料9をクリックしてください。
資料-09
ここで紹介したのは、当行が提供する法人向けサービスのほんの一部にすぎません。でも、こうした様々な金融サービスを組み合わせることで、企業のニーズを解決することができます。それでは、ここで問題です。
問.ある大手メーカーがグループ会社の間接業務を金融子会社に集約する業務改革を進めています。集約する間接業務は、グループ資金の一括管理、支払事務、売上回収金管理にまで及びます。この大手メーカーグループを支援する機能を三井住友銀行の主要な法人向けサービスの中から選んでください。
資料9をもう一度開いて、じっくり考えてみてください。解答は、3時限目に明らかにします。
法人向けサービスの提供により、ネットで行われる資材調達や販売などの取引をより効率的に行なうことが可能になります。また、企業の業務効率化のニーズに対応することで、その企業の価値は向上していきます。法人向けサービスの企画・開発は、まさに日本の企業活動を元気にする仕組みづくりなのです。
たがいに利益を得る企業同士の提携を、アライアンスといいます。e-ビジネス戦略に基づくアライアンスの推進は、決済業務部の重要な業務です。このSTEPでは、銀行がお客様の幅広いニーズに応えるためには、アライアンスが不可欠であることを学びましょう。
e-ビジネスにおいて、銀行はどのようなアライアンスをめざしているのでしょう?ここでは、アライアンスを組むことでシナジー効果が発生し、たがいに利益を得ることができる具体例についてお話しましょう。
私たち銀行には「銀行法」に定められた業務の範囲があり、これ以外の業務を行なうことはできません。企業のニーズに対応していく過程で物流や物販などの機能が求められても、銀行本体で行なうことはできないのです。しかしお客様は、あるサイトで買い物をした時に、支払いや配送まで一度に手配してほしいというニーズを持っています。こうしたニーズに応えるために、たとえば宅配業者と手を組むことがアライアンスです。言い換えれば、ニーズが銀行と異業種の融合を求めているといえます。
現在、「Fintech」という言葉をよく耳にすると思いますが、スマートフォンやIT技術を軸に新たなサービスを展開するベンチャー企業との連携も今後より一層活発になっていくと考えます。
異業種同士のアライアンスでは、提携した企業の双方が、互いに顧客を共有しあうことで大きな利益を得ることができます。その具体例をみてみましょう。資料10をクリックしてください。
資料-10
当行は、通信販売やチケット販売を行う企業等、返金をしたいのに受取人の口座番号がわからないという企業のために、「ネットDE受取サービス」をアライアンス先と共同で開発しました。このサービスは、振込先口座情報を受取人ご自身に入力していただき、口座確認を行ったうえで振込を行うサービスです。
・アライアンス先の強み➡携帯電話を活用した電子決済のパイオニアであり、大手企業の多様なニーズに柔軟に対応
・当行の強み➡口座の事前確認と銀行振込に関するノウハウ
また、IT技術やITサービスに強い企業との提携や合併会社の設立により、FinTechサービスなど、新たなサービスを提供することが可能になります。
資料-11
このアライアンス例では、当行とNECで合弁会社ブリースコーポレーションを設立し、FinTechサービスとして、スマートフォンを使った新たなコンビニ収納サービスの提供を開始しました。新サービスは、払込票上にバーコードで表示された支払情報を、スマートフォンの画面上に電子バーコードとして表示することで支払いが可能となる、ペーパーレスで便利なコンビニ収納サービスです。
資料-12
同じく、当行のグループ会社フィナンシャル・リンクとNECにより合弁会社NCoreを設立し、BPOサービスを開始。NECグループの業務ノウハウ、AI(人工知能)およびRPA(ロボットによる業務自動化)などのIT技術を活用し、従来の金融サービスよりも広範なBPOサービスを提供しています。
もうひとつ、サービス提供の例として、 APIの接続により外部サービスと連携することで、企業が行うさまざまな決済業務をシームレス化し、効率化することができます。
資料-13
インターネットバンキング「SMBCダイレクト」の利用者は、ある自動家計簿・資産管理サービスと連携して、IDやパスワードを第三者に預けることなく、SMBCの口座と連携することが可能になり、口座の入金・出金情報、振込依頼データなどの確認ができるサービスです。データを繰り返し入力する必要がなく、シームレスな会計管理をすることが可能になります。こうした外部連携サービスは、FinTech分野のイノベーションにより、ますます広がっていくでしょう。
ここまでのSTEPでは、決済業務部の実際の活動について、主に企画の視点から紹介してきました。しかし、私たちの活動はそれだけにとどまりません。2時限目の最後として、企画を具現化するための仕事についても知っておきましょう。
企画の具現化、つまり顧客にあわせたソリューションをカタチにするためには、まず計画全体のグランドデザインを行ない、その実現に向けたプロジェクトマネジメントを進めます。資料14をクリックしてください。
資料-14
プロジェクトマネージャーとしての私たちの仕事は、かなり多彩です。もっとも大切なのは、プロジェクトを円滑に進めるための市場調査や関連部署との調整です。
たとえば、新たなサービスを企画した場合、アイデア段階でどれだけの数の利用が見込まれるかを市場調査し、銀行が得る収益について試算します。これをもとに事業計画書を作成し、関連部署に説明。その意見を事業計画書に反映させた上で、経営陣に説明して承諾を得ます。ビジネスとして成立する計画をあらかじめしっかり固め、幅広い企業に提供できるようにサービスを設計しておくことは、e-ビジネスにとって極めて重要です。
また、他社とアライアンスを組んだ方がよいと判断すれば、他社にも事業説明を行ない、参加を勧誘します。もちろん法律的に銀行法等に抵触しないのか確認したり、利用者からの問い合わせに対応できる体制の構築も忘れてはなりません。 こうしたマネジメントがあってこそ、プロジェクトはスケジュール通りに完成します。関係各部署と協力しながらソリューションをカタチにしていくのは、私たちの大きなやりがいの一つです。
計画がしっかり固まったら、次はシステムを設計します。どんなにすぐれたアイデアを考え出しても、実際にネット上で機能しなければサービスとして提供できません。ソリューションを実現するシステムの開発と、運用のサポートまでが私たちの役割となります。
とはいえ、私たちが自分だけでプログラムを書くわけではありません。 実際の開発作業は専門部署に任せ、私たちの仕事は、システム開発に必要な要素を決め、開発作業の進捗状況をマネジメントすることが中心です。資料15をクリックしてださい。
資料-15
サービス対象者のニーズや利用状況などを把握し、それに基づく機能やシステム構成を設計し、必要な機能を紙に落とし込むまでが私たちの作業です。
サービスの内容や提供する相手によって、要求されるシステム機能、構成、性能、運用などが違ってきます。たとえば消費者向けのサービスなら取引件数が多くなることを予想して設計しなければなりません。企業向けのサービスなら消費者向けほど取引件数は多くならない場合もありますが、1件当たりの扱う金額が大きいため、それに応じたシステム設計が必要になります。
以上のような状況を把握した後、どのようなシステムを作ればよいか、その機能を一つ一つ決めて紙に落としていきます。その後、システム開発担当部署と共同でプログラミングなどの開発作業を行なっていきます。
システム開発の作業には、最新の情報技術に対する知識が求められます。特にインターネットを経由するサービスのシステム開発には、セキュリティに対するチェック(対策)が極めて重要です。インターネットはその安全性を気にする利用者が多く、資金移動を行なう銀行のサービスには万全のセキュリティ対策が不可欠なのです。
ここでは、参考までにインターネットセキュリティの基礎知識を身につけておきましょう。 インターネットで起こり得る悪意の行為の代表的なものに、ウイルスや盗聴、不正アクセスがあります。こうした行為に対して、当行では現段階で考えられる最高水準のセキュリティを確保しています。資料16をクリックしてください。
資料-16
セキュリティ対策の一つとして、指紋・声・顔の生体情報を利用して、パスワードを入力しなくても認証ができる機能も登場しています。
資料-17
株式会社ポラリファイが開発した生体認証アプリと連携することで、当行のインターネットバンキングアプリにより、指紋・声・顔の生体情報を利用して、パスワードを入力しなくても認証ができる「生体認証サービス」を提供しています。
インターネットの分野は技術進捗が早く、セキュリティ対策も「これで終り」ということはありません。常に最新の技術を導入しながら最高のセキュリティを追求するのが、私たちインターネット関連サービスを企画・開発する者の使命です。
これで2時限目の講義は終了です。
e-ビジネスの実際の仕事について、理解できましたか?駆け足の講義なので、難しいところもあったでしょう。納得のいくまで復習して、2時限目までの理解を完全なものにしてください。次の時間には、e-ビジネスから生まれる次世代の銀行業務の可能性について講義します。がんばって受講を続けてください。 課題も、忘れずに考えておいてくださいね。
課題.ある大手メーカーがグループ会社の間接業務を金融子会社に集約する業務改革を進めています。集約する間接業務は、グループ資金の一括管理、支払業務、売上金回収管理にまで及びます。この大手メーカーグループを支援する機能を三井住友銀行の主要な法人向けサービスの中から選んでください。
答えは、3時限目の講義の中で明らかにします。