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個人向けビジネス
ライフプランニング研修所
人生のマネープランを提案する、新しいスペシャリストになろう
2時限目 実地研修

MCデスクの相談業務

またお会いできましたね。前回の導入研修はいかがでしたか?ライフプランニング業務の大枠について、あなたなりにイメージできたのではないでしょうか。第2講は、舞台を実際に業務を行う営業店に移しての実地研修です。私・安等木の他、第一線のファイナンシャルプランナー2名が講師として参加します。

ライフプランニング研修、いよいよ本番といった感じです。がんばって受講を続けてください。

それでは早速、最初のステップ「誰もが、お金について不安なんだ。 」から第2講の講義を始めましょう。

ここでは新しく二人の講師を紹介しましょう。当行の個人部門コンサルティング業務部の皆川豊講師と、A支店お客さま相談課の仲間友子講師です。ライフプランニング業務に必要な知識とノウハウ、そして提案力と人間力について、二人の話から実践的に学んでください。

#Step01誰もが、お金について不安なんだ

マイホームの購入や住宅ローン借り換えによる家計見直しのこと、教育資金のことや退職金の運用のことなど。当行ではお客さまの様々なご相談にお応えするために、原則全店にライフプランニング業務の拠点となるマネーライフ・コンサルティング・デスク(以下「MCデスク」)を設置しています。お客さまが休日や夜間にもお気軽にご相談にお越しいただけるように「SMBC コンサルティングプラザ」を展開しています。

それでは、まず皆川講師に登場願いましょう。

1)どんなお客さまが訪れるのだろう?

実地研修では、私・安等木と講師の対話の形で講義をすすめます。それでは皆川講師、よろしくお願いします。

「コンサルティング業務部の皆川です。よろしくお願いします。」

早速ですが、皆川講師の仕事から紹介してください。A支店の方ではないのですね。
私が所属するコンサルティング業務部は、国内拠点の業務推進の支援などを主なミッションとし、その中で私は当行のライフプランニング業務のサービス拠点となるMCデスクのサポートを担当しています。導入研修で、安等木講師がファイナンシャルプランナーの職務としてライフプランアドバイザー(LA)、ファイナンシャルアドバイザー(FA)・ウェルスマネジメントバンカー(WMB)の3つがあると紹介しましたが、MCデスクはマネーライフコンサルティングを担当する拠点です。現在、当行ではほとんどの店舗にMCデスクを展開しております。MCデスクを担当するファイナンシャルプランナーに対し、ニーズにあわせた提案やコミュニケーションのスキルを研修でサポートするのが、私の仕事になります。本日は、A支店に勤務するもう一人の講師・仲間さんとロールプレイング研修の打ち合わせに来ています。
ロールプレイング研修の内容も、この実地研修に反映していただきましょう。さて、まず質問ですが、MCデスクに来られる方はどんなお客さまなのですか?
圧倒的に多いのはこれから資産を作っていく勤労者(いわゆる「サラリーマン」:以下サラリーマン)層、そしてその奥様ですね。サラリーマンのライフステージには結婚、子供の教育、住宅購入、老後の資金づくりといった一定のパターンがあります。MCデスクでは、こうした共通のパターンに個々のお客さまのライフイベント、つまり夢やビジョンを組み合わせて提案を行うわけです。最近では、将来の経済的リスクにみんな漠然と不安を感じています。そこで、若いうちから長期にわたりお金を貯めておこうといった提案が有効となるのです。
しかし、サラリーマンは、あまり銀行の支店に来ていただけないか、来ていただいたとしてもすぐ帰られることが多いのでは?
その通りですね。相談の対象は奥様となる場合が多いです。その辺は後から仲間講師に語ってもらうとして、サラリーマンのニーズをダイレクトにつかむために、私たちはリモートチャネルを利用してアプローチをしています。
それはどんな手法ですか?
サラリーマンのお客さまは、ご来店されてもATMでお金を引き出すなどしてすぐにお帰りになるケースが確かに多いのです。そこで、一部の営業店ではIC型のキャッシュカードにインプットされた属性からお客さまのプロフィールを判断し、たとえば30代~40代のサラリーマンであればATMからカードが出てくるまでの時間に画面で住宅ローンのご案内などを表示しています。また、電話やインターネットによるお取引の場合でも、コールセンターのオペレーターによりライフプランに関する色々なご案内をしています。
お客さまが当行と接点をもつ様々な場面を利用して、ニーズの掘り起こしをするということですね。

2)ちょっとしたひと言が“ニーズのきざし”

リモートチャネルによるアプローチはあくまで広範なニーズの掘り起こしであり、ライフプランについての相談業務を行うのはあくまで支店の窓口ですね。お客さまは、普通預金や定期預金口座の作成、投資信託の購入、ローン関係など色々な手続きでご来店されます。そうしたあらゆる機会を通じてお客さまの“ニーズのきざし”をつかむよう研修などで指導しているのですよ。お客さまに対するちょっとした一言、応対が、お客さまのニーズをひきだし、最終的に長いおつきあいにつながることになります。
せっかくですから、従業員の指導用に作成したロールプレイング研修の台本から“ニーズのきざし”がどんなものか説明していただけますか。
そうですね。それでは資料1をクリックしてください。

資料-01

ロールプレイング研修台本1

口座開設に対する感謝の言葉

~状況設定~

ローカウンターへ30代の女性が口座開設に来店。ローカウンター担当者が、短い会話の中から“ニーズのきざし”をつかむ。

今のは教育資金についての“ニーズのきざし”ですが、他の資金についても同様です。お客さまはみな将来の資金について漠然とした不安を感じていることが多いですから、ちょっとしたきっかけでライフプランの話に持ち込むことができます。

今のロールプレイングは、ローカウンターでニーズをつかむケースですね。MC デスクとの連携はどうなっているのですか?
基本的にはお客さまをローカウンターからMCデスクにご案内します。A支店の場合なら、支店全体が連携して相談業務を推進しているかたちですね。さて、“ニーズのきざし”をみつけ、提案のきっかけをつかんだら、次はライフプランに必要な具体的な金額を出すのが有効です。
たとえばどんなものですか?
お客さまのプロフィールにあわせて様々な種類がありえますが、代表的なものは次の3つです。資料2をクリックしてください。

資料-02

具体的な金額でお客さまの興味をつかむ

こうした数字は確かに有効だと思いますが、会話の中で自然に知らせることが重要ですね。
その通りです。今回作成しているロールプレイングの台本は、そんな自然な会話のモデルを作ることに目的があるのですね。では、会話の中で金額を出すくだりを抜粋して紹介しましょう。資料3をクリックしてください。

資料-03

ロールプレイング研修台本1

ここまでくれば、子供の教育のための資金づくりに話を進めるのは自然の流れですね。住宅資金や老後資金の場合でも同様です。皆さん将来の資金について不安を持っているから、具体的な金額に興味を示すのです。

3)一人一人にあわせた相談の「秘密兵器」

しかし、実際の店頭では、この台本のようにスムーズに会話が進むものでしょうか?
ロールプレイングの台本はあくまで研修用のものですから、実際にはお客さま一人一人にあわせた会話が必要ですね。そのために、ローカウンターやMCデスクの現場では、MCIFというお客さま別のデータベースを活用しています。
マーケティング・カスタマ-インフォメーション・ファイルですね。
実物を見てみましょう。資料4をクリックしてください。

資料-04

MCIF(マーケティング・カスタマ-インフォメーション・ファイル)

・「有人拠点での相談履歴」「ダイレクトメールや架電セールスのプロモーション履歴」「電話やWEBでの取引履歴」を一元管理、リアルタイムで登録、照会

・お客さまに応じたセールスメッセージ

一人一人のお客さまについて

・個人版バランスシート(B/S)、損益(P/L)
・運用・調達両面での顧客のスタイルを作成し、
・顧客ニーズ、案件、応対履歴を、きめ細かに管理

MCIFは、お客さま別のプロフィールや当行での取引履歴をデータベース化したものです。

MCIFには、お客さまが当行とお取引を続ける中で収集されたプロフィール情報がすべて共有化されています。たとえば、A支店と取引を開始される前にB支店で組まれた住宅ローンの詳細や、その際にB支店の担当者が提案した内容まですべて記録されています。MCIFを見ながら会話することで、お客さま自身さえ忘れていた過去の取引データなどを知りながら、より深いニーズをつかむことができるのです。

お客さまの立場になれば、A支店だけでなく当行全体がお客さまのライフプランをサポートしていることになりますね。
そう感じていただければ嬉しいのですが。相談力を構成する2つの力のうち、人間力については皆さん漠然とした印象をお持ちだと思います。相手の立場や痛みを思いやる気持ちの背景に、MCIFのような情報力があることを知っておいてください。

#Step02ライフステージに合わせて提案しよう

主にMCデスクに来られるサラリーマン層には、各世代のライフイベントにあわせた一定の資金ニーズのパターンがあります。ここでは、この共通パターンにあわせた提案の事例を学びましょう。提案力とはどんなものかが、具体的に見えてくるはずです。

1) 人生の三大資金ニーズ

それでは、具体的な提案の実習に入りましょう。皆川講師は、前のステップの最初で、お客さまには代表的な資金ニーズのパターンがあるとおっしゃいましたね。それに合わせた提案の方法について具体的にお話しいただけませんか。
まず知っておいていただきたいのは、ほとんどすべてのお客さまに共通する資金ニーズです。住宅資金・教育資金・老後資金の3つをさし、これを、『人生の三大資金ニーズ』といいます。『人生の三大資金ニーズ』とそれぞれの世代の収支状況を組み合わせると、その人に合わせたマネープランの大枠が設定できます。資料5をクリックしてください。

資料-05

ライフプランと主な必要資金の例

人生の3大資金ニーズと各世代の平均的な収支状況を組み合わせ、導入研修で学んだライフプランシミュレーションを行うことで、各年代の収支は赤字になるのか、黒字になるのか?いつまでにどれだけの資金を作ればよいのか?などマネープランの大枠が設定できます。

実際の提案では、この大枠にお客さまから聴取したそれぞれのライフイベントを加えたシミュレーションを行います。ライフイベントは人それぞれですが、お客さまの年代にあわせてここにも一定のパターンがあります。資料6をクリックしてください。

資料-06

一般的な年代別イベントと金融ニーズ

これは、主にMCデスクに来られるサラリーマン層各世代の特徴と共通するライフイベント、それに応じた金融ニーズをまとめたものです。

各年代について簡単に説明しましょう。まず30代前半では結婚し、子供が生まれる人が多いため、住宅の頭金づくりや将来の教育資金を考えた長期にわたる積立を提案することが多いです。また30代後半では、実際に住宅を購入するためのローンをどう組むか、といった提案が主流になります。

その他にも旅行や自動車の購入といったライフイベントがありますね。
そういった計画やビジョンを組み込んだライフプランシミュレーションにより、月々に積み立てる無理のない額などを設定します。これは他の年代でも一緒です。さて、40代になると教育の負担が増えてくるため、住宅ローンと合わせてかなりお金の余裕がなくなってきます。まさに“収入のバランスが厳しい40代”です。この世代には、住宅ローンの借り換えや生命保険の見直しにより、毎月の負担を軽くする提案が有効です。50代になるとお子様が学校を卒業し、お金にゆとりができることが多いため、かなり幅の広い提案が可能になりますね。マンションから一戸建てへの引っ越しを考えた住宅ローンの組み換えや、老後に向けた積み立て定期、投信の積み立てなどの提案が可能です。60代になると、住宅ローンが終了する人が増えます。また給与から年金収入へ移行する時期でもあります。この辺を捉えた老後資金の運用提案が主流になります。
提案に用いる商品もかなりの数になりますね。
銀行が扱うすべての商品といっても過言ではありません。主な商品をあげるとこんな具合です。資料7をクリックしてください。

資料-07

目的別にお金を分ける

商品の提案に当たっては、ライフプランシミュレーションにより必要な資金を算出し、いつまでにどのくらいのリターンを得て資金を作るかを考えたら、今度は目的別にお金を整理して考えてみることが大切です。たとえば目前に迫った住宅用の資金なら安定性重視の商品への配分、若いお客さまの将来のための老後資金づくりなら収益性重視の商品への配分が求められます。このように目的別に分けたお金の配分のことをポートフォリオといいます。お客さまそれぞれのケースを分析し、最適のポートフォリオを構築できることが、“提案力”の1つの側面になります。

2) このお客さまには何を提案しますか?

それでは、ここで皆さんにも考えてもらう実習です。次にあげるプロフィールのお客さまには、どんな商品の提案が最適でしょう。資料7の主な提案商品の中から選んでください。その理由も考えてくださいね。

問.

60歳になり、約3000万円の退職金をもらって定年を迎えたBさんがいます。お子様は学校を卒業しており、教育費や生活費の援助の心配はいりません。また、Bさんはあと5年程度は関連会社に移って働く予定で、その後は奥さんと海外旅行を楽しみたいと語っています。Bさんに最適の金融商品はなんでしょう?

答がわかった人は、資料8をクリックしてください。

資料-08

Bさんへの提案

どうです?皆さん。退職後の前後で提案を分ける発想には気づかなかったのではありませんか?お客さまごとのケースを分析する提案とはこういうことです。お客さまのニーズによって、様々な提案が可能なことの一端がみえるでしょう。

3) マイホームを手に入れる確実な方法

ここで人生の三大資金ニーズに合わせた提案の実例を勉強しましょう。お客さまのプロフィールや、収入、ライフイベントに合わせたマネープラン作りの実習です。マイホーム取得を事例に取り上げます。
それでは、35歳でマイホーム購入をめざすCさんの相談にのってみましょう。Cさんのプロフィールは次の通りです。

Cさんのプロフィール

・中堅商社勤務
・年収500万円(手取り)
・現在35歳で妻、子供二人の四人家族
・25歳で第一子誕生、28歳で第二子誕生
・現在の自己資金500万円

それでは、実際の提案と同じプロセスで、Cさんが無理なくマイホームを手に入れる提案を考えてみしょう。
まず、収入基準という考え方があります。これによって、Cさんの収入から考えた返済に無理のない借入額を算出することができます。この額が、Cさんが購入できるマイホームの基準といえます。資料9をクリックしてください。

資料-09

収入基準:いまの収入からいくら借り入れが可能なのか?

マイホームを購入する場合、自己資金、つまり頭金は25%程度が標準。物件価格の残りをまかなうのが、住宅ローンです。でも、無理なローンは禁物。「いくらの物件を買うか」という予算をたてるには、ローンの返済能力を確認する必要があります。お客さまご自身やご家族のローン返済能力について知ることが、自己資金と並んで重要なポイントとなるのです。住宅ローンには、「収入基準」と呼ばれる条件があります。たとえば、住宅金融支援機構なら、「毎月の返済額は、その4倍以上の月収(年収の12分の1)が必要」。つまり、年収の25%以内が毎年のローン返済の目安ということになります。年収500万円のBさんなら年間返済額は125万円以内です。

しかし、これで安心はできません。Cさんには二人のお子様がいますから、教育資金を考慮することが必要です。お子様の教育資金を組み込んだライフプランを図にするとこうなります。資料10をクリックしてください。

資料-10

Bさんが買えるマイホームの目安は?

年間返済額100万円以内、そして自己資金500万円という条件から、かなり正確にCさんが取得できるマイホームの価格を割り出すことができます。資料11をクリックしてください。

資料-11

ライフプランとライフイベントの例

45歳をピークに、教育費がかなり跳ね上がるのがわかります。また、先ほどの計算は35年間の返済を前提にしていました。この図では、Aさんがリタイアした後も住宅ローンの返済を続けることになります。ちょっと荷が重いですね。

そこでCさんへの提案です。

提案1
500万円×20% ÷12カ月÷4742円×100万円=約1757万円
頭金として500万円の自己資金を加えると、約2257万円です。
これが、Cさんが無理なく購入できるマイホームの金額ということになります。

提案2
子供の教育資金やリフォーム資金も視野に入れる ライフプランに合わせて選べる当行の住宅ローンには、大きく次の3つがあります。その中から最適なものを提案しましょう。 資料12をクリックしてください。

資料-12

ライフプランに合わせた三井住友銀行の住宅ローン

Cさんの場合はやがて教育費用がかさむことがわかっていますから、住宅ローンに加えて将来的には教育資金やリフォーム資金もお借り入れができる《諸費用・教育・リフォームローン(住宅ローンロ)》が提案できます。また、ガン・脳卒中・急性心筋梗塞のいずれかと診断された場合に、住宅ローン残高がゼロになる《三大疾病保障付住宅ローン》もご利用できます。

Cさんが無理なく購入できるマイホームの額は約2257万円ですが、これは中古マンションの価格帯です。もしCさんが新築のマイホーム(標準2630万円)にこだわるのであれば、不足する約400万円を調達する2つの対処法があります。まず親からの資金援助、そして勤務する会社によっては社内融資制度を活用することです。こうした方法をご説明し、Cさんの判断にまかせるのも有効でしょう。また、住宅を販売する不動産会社によっては、購入価格の90%や95%まで住宅ローンを借りられるケースもありますが、毎月の返済額を考えるとどうでしょうね?

豊富な事例を使った実地研修、ありがとうございました。次のステップでは、皆川講師に代わり仲間講師が登場します。毎日多くのお客さまとお会いする仲間講師の経験から生まれた、実践的なコミュニケーションと提案のスキルを学んでください。それでは皆川講師、ありがとうごさいました。
それでは失礼します。皆さん、引き続きがんばってください。

#Step03コミュニケーション実習:お客さまの心はこうつかむ

ここからは、講師を仲間講師にバトンタッチ。経験から培った実践的なスキルを紹介します。まずお客さまの心をつかみ、提案に持ち込むまでのコミュニケーションスキルの実習です。相談力の中の「人間力」にあたる部分を、具体的な事例をもとに理解してください。

1)ファイナンシャルプランナーの2つの役割

仲間講師はA支店のMCデスクで実際にライフプランニングの相談業務に当たっている第一線のライフプランアドバイザー(LA)です。実践的なお話をたくさん聞きたいと思います。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

まず質問ですが、仲間講師は1日にどれくらいのお客さまを担当するのですか?
A支店には2つのMCデスクがあります。両方合わせて1日で10人といったところでしょうか。私一人にすれば、1日5人程度のお客さまとお話しすることが多いですね。お一人当たりに費やす時間は1時間程度。長くて1時間30分ということもあります。
A支店ではどんなお客さまが多いのでしょうか。
実際にMCデスクに来られるお客さまは千差万別です。私の支店では、サラリーマン、主婦、商店主、医師、退職後のご夫婦などが多いですね。特に、地域柄、お子様連れの女性が多いです。
それはどんな理由からですか。
この街には、有名な幼稚園があります。その幼稚園にお子様を入園させる女性が、お子様連れで保育料の支払い口座を開設しにご来店になることが多いんです。先ほど、皆川講師との話の中でお子様連れの女性から“ニーズのきざし”を引き出すロールプレイングの台本を紹介していましたね。あれは、この支店での代表的な対話をまとめたものです。

やはりローカウンターからお客さまをバトンタッチすることが多いのですか?
そういうケースもありますが、私の場合は自分からお客さまに声をかけることもします。たとえば幼稚園に入園する年頃のお子様を連れたミセスがご来店されますね。そのほとんどは保育料の口座開設が目的です。だからこちらから声をかけるんですよ。『こちらなら待たずに口座をお作りできます』って。
なるほど。それはとても実践的なノウハウですね。
まず、口座開設の手続きをしながらお子様の年齢を聞きます。その上で、お子様の進学に応じて何年間でどれだけの資金を作らなければならないか?、お母様に質問するんです。そして、沿線の◯◯学校に行かせたいのなら何年間でこれだけのお金が必要と知らせれば、あとは自然にニーズの聴取ができることが多いですね。
皆川講師との話ででた“金額の告知”のアレンジですね。参考までにもう一度あのくだりを確認しておきましょう。資料13をクリックしてください。

資料-13

ロールプレイング研修台本1

こうした会話の中で、そのお客さまが進学の関係で現在お住まいの沿線から引っ越さないことが確認できたら、次は住宅の方に話を持っていけます。結果的に、人生の三大資金ニーズ全般のお話ができ、ライフプランニングに興味をもってもらうことができるんです。
その間、お子様は退屈したりしませんか?
そのために、A支店のMCデスクには何種類かのアニメの絵本を用意しています。手があいているMCデスクのスタッフが相手をしますので、お母様は安心して相談に集中できます。

2)ホテル業に通じる5つのデリバリー・サービス

当行では、ライフプランニング業務の“相談力”を“提案力”と“人間力”の掛け算として表していますよね。このうちの“人間力”について、仲間講師はどう考えていますか?
お客さまに、『いつもあなたのことを考えています』と伝える力だと思います。それはMCIFを使ったパーソナルな提案でも可能ですし、ロビーで待っているお客さまに『こちらは風が通って寒いですからこちらへどうぞ』と一言かけることでも伝わるでしょう。実は、MCデスクをはじめ個人業務のスタッフは、そうしたホスピタリティ(おもてなしの心)を学ぶために、ホテル業界の専門家を呼んで接客研修を受けているんです。その研修で指導している、“5つのベスト・デリバリー・サービス”についてご紹介しましょう。資料14をクリックしてください。

資料-14

5つのベスト・デリバリー・サービス

お客さまは五感で感じるすべてのことからサービスを評価しています。では、お客さまから評価されるためにどのような注意が必要なのでしょうか。

ライフプランニング業務が本格化したいま、こうしたホテル業にも通じるホスピタリティが求められているわけですね。仲間講師は、この研修を受けてどのように感じましたか?
同じようなこと、やってるなと・・・。こうしたことは、今までの銀行の窓口やロビーでもやっていたと思うんです。でも、ホテルに比べれば、接客サービスという意識には乏しかったのかも知れません。お客さまへのホスピタリティをはっきり認識することで、銀行の個人業務はこれからホテル業に負けないサービス業になっていくと思いますよ。

3)お客さまの金融リテラシー(教育)を育む

仲間講師が考える上手な相談業務のコツはどんなものですか?
まず提案の切り口を豊富に持つことですね。自分が一方的に話す“知識の披露”では最悪ですから、お客さまに働きかけるきっかけを自然につくることが大切だと思います。そのきっかけが、お子様の進学だったり、貸金庫の手続きだったりするわけです。
貸金庫の手続きとは?
貸金庫の手続きにいらしたお客さまは、申込用紙に必ず自分の生年月日を書かれます。すると年齢がわかりますから、お若い方であれば長期にわたる資産づくりの提案がしやすいんです。たとえばこんな具合です。資料15をクリックしてください。

資料-15

ロールプレイング研修台本:長期に渡る資金づくりの提案

今のは私と皆川講師で作成した標準的なトークです。実際に私が話した際には、

『私たちの世代には、もう不動産を資産として持つのは難しいと思います。不動産に代わり将来のインフレに備える資産として、投資信託を考えませんか』

といった内容が加わりました。こうした提案の切り口は、一人一人のお客さまによってみんな違います。MCIFなどを活用し、お客さまに合わせた提案のきっかけを探ることが必要になりますね。

相談業務を進める上でもう1つ大切なのは、何回かいらしたことのあるお客さまでも、初めて来たお客さまと同じようにわかりやすく説明をすることです。

たいていのお客さまは一度説明を聞いても判断を保留することが多いですから、実際の商品購入まで何度か足を運ばれることが多いですね。
たとえ何度もご来店いただいていても、同じようにわかりやすく説明することで、契約がまとまることが多いんです。いわば、お客さまの金融リテラシー(教養)を育てるボランティアのつもりで説明するといいのかもしれません。その結果、お客さまのライフプランニングヘの意識が高まり、さらに『この店は、いつもあなたのことを考えています。』といった心配りが伝われば、具体的な商品の購入まではあとひと息です。話をけっして急がず、お客さまの金融リテラシー(教養)向上のお手伝い意識をもつことも、“人間力”の一部ではないでしょうか。

#Step04提案実習:お客さまに合わせてチャレンジしよう

続いて、仲間講師による提案スキルの実習です。まず導入研修で出題した課題について仲間講師と一緒に考えましょう。さらに、仲間講師が経験の中で培ったセールストークなど、実践的スキルを講義してもらいます。実地研修も最後のステップです。息をぬかずにがんばってください。

1)Aさんのクルマ購入の相談にのりましょう

このステップでは、仲間講師独自の提案のスキルについて、実際の事例をまじえながら学びたいと思います。まず、導入研修で出題した課題を事例としてとりあげましょう。皆さん、答えを考えておいてくれましたか?こんな問題でした。

課題1

このようなライフプランを実行すると、2019年には赤字に転落するAさんがいます。

Aさんのライフプランシミュレーション
Aさんが無事2019年に自動車を購入するにはどうすればよいのでしょう。あなたなら、Aさんにどんな提案を行いますか?

Aさんのライフプランシミュレーションでは、

(実収入)-(支出+毎年の貯蓄投資)=年間収支

の関係で計算すると、2019年に計画している自動車購入の時点で年間収支は保有する金融資産額さえ上回る赤字に転落することがわかりました。仲間講師、実際にAさんから相談を受けたとしたら、どんな提案を行いますか?

まず無謀な自動車購入をやめるように助言した方がいいかもしれません・・・。課題にそって2019年に自動車を購入する前提で考えるなら、2つの考え方があると思います。まずAさんのライフプランの見直しを提案します。
それはどのような見直しでしょう?
Aさんのライフプランでは、2015年から2019年の間に住宅購入、海外旅行、自動車購入と、3つのライフイベントが計画されていますね。住宅購入の翌年の時点で年間収支は赤字に転じているのですから、これはちょっと無茶です。2019年に無事に自動車を購入するためには、まず2017年の海外旅行をとりやめるか、延期することですね。
それはとても常識的で妥当な提案ですね。もう1つの策はどんなものですか?
Aさんのシミュレーションの支出の欄からみると、自動車の購入費用は約300万円ですね。この費用を月々無理のない範囲で積み立てていくことです。これには、3つの方法があります。話をわかりやすくするために、毎年の預金額を50万円とし、2015年からの5年間積み立てるものとして考えますね。ここで資料16をクリックしてください。

資料-16

毎年50万円を積み立てる3つの方法

この方法なら、投資信託の元本割れリスクを考えても自動車の購入費用には十分でしょう。運用期間は5年間と短いですから元本保証型の積立が基本ですが、より高いレベルの車を狙うのであれば(2)や(3)の方法も考えられるということです。

今の方法は、数値は単純ですが立派な投資方法ですね。しかし、リターンを8%と高く設定するとそれだけリスクも当然高くなりますし、株式投資信託を行うには期間も5年と短いので、リスク許容度の高い方でないとなかなか提案するのは難しいと思いますが。
そうですね。お客さまの目的やリスクの許容度によって、元本保証型商品と運用型商品を組み合わせるのは提案の基本の1つです。いまの課題はあえて事例を単純化していますが、運用期間をより長期にとれば、様々な提案が可能です。たとえば自動車の購入資金を元本保証で無理なく積み立てながら海外旅行の資金をつくるなど、いろんなライフイベントの実現が図れるんです。

2)絵に描いたようにわかりやすい説明の方法

こうしたライフプランニングの提案には、金融や投資についてあまり知識がないお客さまにもわかりやすく説明することが何より大切だと思います。仲間講師は、そのためにどんな方法をとっていますか?
絵に描いてしまうことです。
え?
特に分散投資の説明の場合など、絵に描くことでかなり正確にお客さまの理解をうながすことができます。具体的な例から説明しましょう。今日いらっしゃったお客さまの、ホカホカの事例です。そのお客さまは、MCデスクに日本と比べて高いドル金利の動きについて聞きにいらしたんです。現状のご説明をしながらMCIFを見てみると、リタイア後の資金づくりの一環としてドル建外貨定期を1万ドル持っていらっしゃることがわかりました。以前、株式に投資をされたご経験があると聞いたので、そこで、投資資産の種類と通貨を分散するご提案をしたんです。半分を外貨預金でもち、あとの半分を株式と債券を組み合わせて運用するプランです。

半分を外貨預金でもち、あとの半分を日本株と海外債券を組み合わせた投資信託で運用するプランです。資料17をクリックしてください。

資料-17

投資資産の種類と通貨の分散投資

(1)ドル建外貨定期の1/4程度を円に替え、日本株を購入。

(2)さらに1/4程度で複数の海外債券を購入。

(3)ドル建外貨定期の一部をユーロ建定期にシフト。

(4)さらに一部を国内の普通預金にシフト。

(5)そのままドル建外貨定期に残す。

図のタテ軸が投資資産の種類、ヨコ軸が通貨を示しています。投資資産の種類は株式と債券ですので、運用プラン次第でその時運用成績のいい方へ資金をシフトすることができます。日本株と海外債券を組み合わせたプランを選べば、より資金運用の幅を広げられるわけです。同時に、通貨もすぐ現金を引き出せる国内の普通預金と、長期で運用する外貨定期とに分け、外貨定期はさらにドルとユーロに分散しておきます。すぐ引きだせる国内の普通預金を持つことで、日本株の運用成績が今後上昇する見込みが立てばそちらに資金を追加投入できます。また、外貨定期をユーロとドルに分散することで、為替変動リスクを低減することができるのです。つまり、投資資産の種類と通貨を分散することで、トータルのリスクを低減するプランです。

このように絵に描いてご説明することで、そのお客さまは分散投資のメリットを理解され、『証券会社で聞くよりずっとよかった』と喜んで帰って行かれました。時間をかけ、自分なりに工夫することで、複雑なプランでもわかりやすく説明できる実例だと思います。

外貨預金の配分についてはどう説明したのですか。
こんな具合です。

『ドルだけではなく、ユーロにもご興味をお持ちということですが、いま世界の通貨の供給量の40%はドル建です。日本の通貨は15%、ユーロは20%となっています。余裕の資金がおありでしたら、この配分にあわせて幅をもった運用をされてもいいのではないでしょうか』
なるほど。絵だけでなく、どんな言葉を使うかも大事ですね。
はい。なるべくお客さまの印象に残り、メリットをイメージしやすい言葉を使うように自分なりに工夫しています。たとえば先日資金に余裕のあるお客さまに、住宅ローンの繰り上げ返済をご提案しました。その時に説明した言葉は、

『たとえば余裕資金の中から100万円を繰り上げ返済すれば、元本部分の100万円を返済したのと同じことになります。』

こうした説明のための表現は、お客さまにあわせてみんな違うでしょう。対話の中でお客さまのご理解のレベルなどをつかみ、それにあわせた表現を工夫することが大切ですね。
いいファイナンシャルプランナーは、キャッチフレーズが上手い、ということですか・・・。

3)成功のキーワードは「ありがとう」

最後に、リスクについて聞かせてください。お客さまのリスク許容度、つまりどれだけの価格変動を容認できるかという点を、どのように確認していますか?
私が一番気に掛けていること。それはお客さまがリスクについて理解をされぬまま、商品を購入してしまうことです。まず投資経験をきっちりとお聞きし、投資信託など価格変動リスクのある商品を買うことを少しでもためらうお客さまには、元本保証型商品しかご提案しません。ただ、リスクについてのご説明はします。こんな具合のトークです。

『たとえばお子様を学校の校庭の中だけで遊ばせれば危険は少ないですが、外の世界を知らずに育ってしまいます。外の世界に出れば危険も多い代わりに、豊かな可能性もあります。資金づくりも同様です。リスクをとるとは、思いきって外の世界の可能性を探しに行くことなんです。』

また、長期にわたる運用を行うことで、価格変動のリスクはかなり抑えられることもご説明します(この辺の詳しい話は、次の理論研修でたっぷり行います by安等木)。こうした説明に納得した上で購入されれば、たとえ提案した商品が元本割れを起こしても、お客さまからクレームなどがくることはまずありません。大事なことは、このような説明を銀行としての見解ではなく、自分の意見として言うことですね。MCデスクにいらっしゃるお客さまは、投資やライフプランニングについてある程度ご自分の考えをもっていらっしゃることが多いんです。そんなお客さまに型にはまった公式見解を話しても、心にはとどきません。一人のファイナンシャルプランナーの意見としてコミュニケーションすることで、お客さまとの信頼関係も深まるし、より深く納得していただいてから商品を販売することもできると思います。
導入研修で“ファイナンシャルプランナーとは、銀行の看板をはずした固有名詞の仕事”と紹介しましたが、まさにこういうことを指すと思います。ところで、お客さまが説明を理解されたかどうかは、どこで判断するのですか?
納得されたお客さまは必ず“ありがとう”など感謝やねぎらいの言葉を残されます。それは、知らなかった知識が身についた喜びから発せられる言葉だと私は考えています。“ありがとう”などの言葉を残されたお客さまは、帰宅して資料などを読んで検討され、もう一度ご来店されることが多いですね。ですから、私にとってお客さまの“ありがとう”は、提案が成功したことを示す言葉なんです。

仲間さんのようなスキルを身につけるには、どんな勉強が効果的なのでしょうね。
私もまだまだ勉強中ですが・・・。まず、目標とする人をみつけ、そのマネをすることが一番早いです。私も、尊敬する先輩のマネをすることで現在のスキルを身につけました。提案スキル、商品知識、コミュニケーション能力、なんであっても、とにかく自分にないものを求めて努力を続けることが大切です。A支店では、毎日夕方にMCデスクのスタッフが集まり、その日のトピックスを話し合うんです。お客さまのこともよくわかるし、お客さまから伺った他行の情報も入ってきますね。また、それぞれのスタッフがもつスキルも、ある程度共有することができます。みんな、こうした努力を続けながら、自分自身を磨いています。MCデスクの仕事は、毎日がチャレンジですよ。
お忙しいところ、ありがとうございました。

終了

これで実地研修は終了です。

A支店での実地研修はいかがでしたか?

導入研修で学んだライフプランニング業務の大枠が、皆川・仲間両講師の話や事例からより具体的に理解できたと思います。理解が足りないところは、何度でも繰り返し復習してください。

私・安等木による研修は、ここまで。第3講では、新しい講師として金森講師が登場します。ここまで学んだ知識やスキルについて、理論的な側面からさらに理解を深めてください。

それでは、終講式でまたお目にかかります。それまで、がんばって受講を続けてくださいね。