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1時限目 ファーストステージ

「ベンチャー発掘・育成講座」

この講義は、「ベンチャー発掘・育成」「株式公開支援」「あなたの時代の企業の育成支援」の三部で構成されます。

1時限目では、これからの日本経済を担うベンチャー企業にスポットをあて、その定義から具体的な支援策までを学びます。また、2時限目では株式公開の基礎知識と新興の株式市場について、3時限目ではベンチャー支援と株式公開が融合したこれからの時代の企業の育成支援を学びます。

盛り沢山の内容ですから、ステップを踏んでしっかり理解してください。

#Step01企業を発掘して大きくしよう

企業は通常、成長していく過程でいくつかの転換期を迎えます。それぞれの時期にあわせて、企業の成長を的確に支援するのが銀行の役割です。ここでは、企業の育成支援業務の中心となる、企業成長の2つのステージについて勉強しましょう。

1)企業は成長する生き物なんだ

「会社は生き物」・・・経験豊かなビジネスマンが、よく口にする言葉です。企業の育成支援業務を担当していると、別の意味で“企業って本当に生きているんだ”と実感することがあるのです。

まず、大きな夢を抱いて産声をあげる時期があります。この時期に的確な栄養と愛情を注がなければ、どんな可能性をもった企業だってスクスクとは育ちません。やがて、健康に育った企業は、“株式市場”という社会に参加する時期を迎えます。そのまま成長を続ける企業もあれば、安定期に入って成長が鈍くなる企業もあります。不意の事故でなくなってしまう場合だって珍しくありません。

企業は成長する生き物―まず、このことを心に刻んでもらってから、講義を始めます。

2)企業の“一生”の2つの転換期

さて企業には、その成長にあわせて大きな2つの転換期があります。それぞれのステージにあわせて、企業を的確に支援することが私たちの仕事。大きく分ければ、「ベンチャーの発掘・支援」と「株式公開支援」の2つの業務です。ここで、資料1をクリックしてください。

資料-01

企業の成長曲線モデル

これは、企業が順調に成長する場合のイメージモデルです。スタートアップ期、つまり創業期を乗り越た企業は、アーリー期に入って急速な成長を始めます。これが「ベンチャーの発掘・支援」のステージです。ミドル期で着実な業容拡大を果たした企業は、次に株式市場での公開をめざします。この時期に的確な「株式公開支援」を行なうことで、企業は株式市場という社会に参加し、日本経済の活性化に貢献できるのです。

企業が、2つの大きな転換期、つまりアーリー期の急成長と株式公開の準備期を乗り越えるためには、事業資金や株式市場の情報、経営ノウハウなどさまざまな“栄養”が必要です。銀行が行なう企業の育成支援とは、こうした栄養を的確に補給することで、企業をさらに成長させ、経済社会への参加をうながす業務とイメージしてください。

3)いい企業を発掘し、育てるのが銀行の使命

それでは、なぜ銀行は企業に対しこのような育成支援を行なうのでしょう?

その理由として、預・貸金主体からソリューションビジネスへの業務変革があげられます。預金者から預かった資金を運用し、金利収入を得るビジネスから、顧客のもつニーズや課題を解決することで新たなビジネスを開拓するスタイルへ、銀行業務は大きく変わりつつあるのです。

銀行には、これまでの金融業務で培った幅広い業種に渡る情報と、豊富な経営ノウハウがあります。また企業経営に必要なあらゆる機能を提供できるグループ企業があります。これらの経営資源を有効に使って様々なソリューションビジネスを展開していますが、特に次の世代の成長企業を支援することは、単に自らのビジネスの問題にとどまらない、銀行の社会的な使命の一つといえるでしょう。

日本経済を支える“明日の大企業”を発掘し、自ら育てあげる。みなさんも、こんなスケールの大きな業務にチャレンジしたいと思いませんか?

それでは本題です。企業の育成支援の最初のスキーム、「ベンチャー発掘・育成」の勉強を始めましょう。

#Step02よく聞く言葉だけど、「ベンチャー」っていったい何だ?

“ベンチャーの発掘・支援”の対象となる企業とは、単なる急成長企業ではありません。ここではまず、ベンチャー企業の概念、そしてベンチャー企業の2つのタイプについて理解しましょう。

1)まず、学術的な定義から

ITベンチャー、ベンチャーキャピタル、ベンチャーファンド、最近の経済誌を読むと、“ベンチャー”という言葉があふれていますね。しかし、その割に、“ベンチャー”の正しい意味を知っている人は少ないようです。銀行が支援するベンチャーとはどんな企業かをまず知ってから、講義を進めましょう。まず、学術的な定義を紹介します。

資料2をクリックしてください。

資料-02

ベンチャーの学術的定義

ベンチャー

成長意欲の強いリーダーに率いられた、リスクを恐れない若い企業。取り扱う商品・事業には、独創性、社会性、国際性などを備える。また、大企業の中で培ったノウハウを生かし新規事業に取り組むケースを社内ベンチャーと呼ぶ。

この定義からわかるように、単に急に成長したというだけではベンチャーとはいえません。成長意欲のあるリーダーに率いられ、商品や事業に独創性などの付加価値を持つことが必要なのです。たとえば、保有不動産を売却して急に業容が拡大した企業などは、ベンチャーとは呼びません。

2)ベンチャーと普通の企業はどうちがう?

それでは、多くの企業の中で、その企業がベンチャー企業であるかどうかは、具体的にどう見分ければよいのでしょうか?ここで一つ例題を出しましょう。資料3をクリックしてください。

資料-03

年間5億円の売上高を持つ2つの企業の成長曲線

ここに、年間の売上高が5億円の2つの企業があります。さて、どちらがベンチャー企業か、その成長曲線から判断してください。

解答はわかりましたか?情報量が少なく判断しづらかったかと思いますが、もし仮に両社とも商品や事業に独創性などのある付加価値が認められるのであれば、正解はA社とB社、つまり両方ともベンチャー企業ということになります。

少し意地悪な質問でしたが、ここでいいたかったことは、ベンチャー企業であるかどうかは急成長していることと独創性などの付加価値が認められることがポイントであって、利益を計上していないベンチャー企業も多数存在する、ということです。次の項目で触れますが、初期段階で多額の研究開発費を必要とする事業を手がける企業の場合、成長段階に入っても開発コスト負担が吸収しきれず、損益上赤字となっているケースがよく見られます。

ベンチャー企業を見極めるには財務情報だけで判断せず、商品・事業の実態を把握し、将来性を判断する姿勢が大切であることをよく理解してください。

3)ベンチャーには2つのタイプがある

ベンチャーは商品・事業に独創性などの付加価値があるか無いかがポイントとなるため、その時代の社会の動きに応じてベンチャー企業を輩出しやすい業種もあります。

現代なら、これからの社会のニーズに応える事業で急成長が予想されるナノテクノロジー・材料、医療・バイオテクノロジー、情報関連・IT、新エネルギー、省エネルギー、リサイクル、製造技術・コンテンツなどがそのような業種と呼べるでしょう。

このように様々な業種で誕生が見込まれているベンチャー企業ですが、業種の区別なく技術やアイデアといった切り口から分類すれば、大きく2つに分けることができます。資料4をクリックしてください。

資料-04

ベンチャーの2つのタイプ

研究開発型ベンチャー

独創的な技術力を背景に、これまで社会になかった新しい機能を持つ製品を開発し、売り出す企業です。最近は新エネルギー、省エネルギー、リサイクルの企業などが注目を集めています。

ニュービジネス型ベンチャー

これまでになかったアイデアにより新しいサービスを考案し、社会に提供する企業です。

技術力を背景に独創的なモノを創り出すのが「研究開発型ベンチャー」、アイデアをもとに新しいサービスを提供するのが「ニュービジネス型ベンチャー」です。

どうです、ベンチャーの生きた意味がわかりましたか?企業は生き物ですから、1社1社、みんな成長のパターンが違います。見かけの成長モデルや、当面の赤字・黒字は確たる指標にはなりません。意欲的なリーダーを持ち、独創的な商品やサービスで伸びていこうとしている若い企業。そんな条件を満たしていれば、ベンチャー企業と判断してよいのではないでしょうか。

次に、産業全体とベンチャーの関わりについても知っておきましょう。

#Step03いま、なぜベンチャーを支援するのか?

ベンチャーの発掘・育成は、日本の経済や産業そのものの活性化につながる業務です。ここでは、ベンチャーと産業構造との関わりを理解し、さらに「産・学・官」のベンチャー支援策を学びましょう。

1)日本の成長戦略の一策として、ベンチャーが求められています

安倍内閣が進める「日本再興戦略」の政策の柱の一つとして、「産業の新陳代謝とベンチャーの加速」が掲げられています。

「ベンチャーの発掘・育成」は、経済の成長と活性化を促し、日本の景気の原動力を育てる業務ともいえます。

ここで、資料5をクリックしてください。

資料-05

いまどうしてベンチャーなのか?

安倍内閣は、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を「三本の矢」として、一体的に取り組んでいます。その中の成長戦略では、「産業の新陳代謝とベンチャーの加速」が掲げられています。日本経済が再び成長していく為に、新産業・新事業の創出が不可欠といえ、その担い手として期待されているのが、革新的な技術や独創的なビジネスモデルをもったベンチャー企業なのです。

ベンチャーの発掘・育成が、新しい日本経済の原動力を創る業務であることがわかりますね。

2)ベンチャーは、日本の産業の起爆剤

ベンチャー企業が日本経済そのものと関わるのは、現在に限ったことではありません。1970年以降、少なくとも4回ベンチャーブームが訪れ、その時代の日本経済に影響を与えています。

ベンチャーと産業界全体の関わりについて、私なりに考察したものをまとめてあります。少し長くなりますが、資料6をクリックしてください。

資料-06

1970年以降の4つのベンチャーブーム

1)第1次ベンチャーブーム

(年代)1970年から73年

(背景)高度経済成長の頂点にあり、インフレ対策のため金融引き締めが緩和されたことと、いわゆる列島改造ブームにより建設・不動産関連を中心に投資意欲が非常に高かったことが引き金になったといわれています。そして、景気が上昇する中で「脱サラ」ブームが起こり、サラリーマンの独立開業が相次ぎました。この時期まではいわゆる「職人のれん分け型」の創業が多く、創業者たちは熟練技能を活かしながら、早くからマイクロエレクトロニクス機器を導入し中堅企業に成長するといった、まさに「ベンチャービジネス」の登場の時期でもあったのです。その他、外食産業や流通・サービス業など、当時の「ニュービジネス」も多数開業しました。しかし、この第1次ブームは、石油危機とともに終焉を迎えたといわれています。

(当時設立されたベンチャー)

ファナック(72年)、モスフード・サービス(72年)、セブン-イレブン・ジャパン(73年)、セシール(74年)、アオキインターナショナル(76年)、ドトールコーヒー(76年)、パソナ(79年)など

2)第2次ベンチャーブーム

(年代)1983年から86年

(背景)第2次石油危機を経て、重化学工業から省エネ型の高度技術産業への転換が叫ばれ始めた時期、エレクトロニクス、新素材、バイオ・テクノロジーなどの分野でのベンチャーの活躍が期待されました。また、83年の店頭登録基準の緩和に端を発し、80年代半ばから証券系、銀行系のベンチャーキャピタルの設立が相次ぎ、日経平均株価も83年の8801円71銭から、86年には1万6401円83銭まで跳ね上がりました。しかし、このブームは実際のベンチャーの輩出や成長に裏付けられたというよりも、「ベンチャー投資ブーム」の性格を持っていました。ベンチャーにとって資金調達が容易にできたために、自社の力量に不釣り合いなほどの過大な投資や急激な経営拡大に走ってしまい、ベンチャーの雄とよばれた企業が相次いで倒産、ブームは終焉したのです。こうした中にあっても情報サービス産業のベンチャーがその後も順調に成長したことは、第2次ブームの一定の成果と言われています。

(当時設立されたベンチャー)

カプコン(80年)、フォーバル(80年)、ソフトバンク(81年)、オークネット(84年)、スクエア・エニックス(86年)など

3)第3次ベンチャーブーム

(年代)1994年から98年

(背景)バブル崩壊後の日本を襲った長期不況は、これまでのような循環的なものではなく、大規模な産業構造の転換によるものという見解が一般的です。これが第1次、第2次ブーム時の経済環境ともっとも異なる点といえます。第3次ブームの特徴は、バブル崩壊後の閉塞感を打ち破るため、新産業を育成するという気運のもとで産学官が足並みをそろえて支援体制を組んだことでした。このため、資金だけでなく情報提供、人材教育などの支援策もかつてないほど充実し、中でも銀行とベンチャーキャピタルは資金支援で大きな役割を果たしました。しかし、97年秋頃、景気停滞でベンチャー企業の業績が急速に悪化し、さらに金融不況が追い討ちをかけ、ベンチャーの倒産が相次ぎブームは終焉を迎えました。第3次ブームの終焉は、支援バブルの崩壊とも言われています。

4)第4次ベンチャーブーム

(年代)99年~01年

(背景)99年3月から始まった産業競争力会議で、当時の小渕政権がベンチャー事業の支援策を強力に打ち出しました。これが、わが国で初めてともいえる本格的なベンチャーブームをもたらしたといわれています。そして、ベンチャー支援の重要なインフラとして99年11月に東京証券取引所に「マザーズ」が創設され、2000年5月には「ナスダック・ジャパン(現新JASDAQ)」が開設されました。これらの動きに呼応し、IT(情報技術)やインターネット関連ビジネスの株式公開が勢いづき、2000年度の公開企業数は新興市場の創設も加わり、200社を超えました。同時に、新興市場の創設にビジネスチャンスを見出した従来のベンチャーキャピタルに加え、外資系金融機関や大手事業会社などの新規参入が相次ぎ、いわゆるベンチャーファンドの設立ブームも起こっています。ちなみに99年度のベンチャー投資額が約2,600億円なのに対し、1999年夏からの1年間で6,000億円強の資金が流入したともいわれています。ただし、2000年に入ってからはネット株ブーム(いわゆるネットバブル)が崩壊し、公開企業の公募価格割れが続出。以降、日経平均株価の下落とともに新規公開市場も低迷することとなりました。

*ベンチャーキャピタル

ベンチャー企業を対象に、リスクの大きいことを覚悟の上で、将来高い収益を得ることを目的に出資あるいは投資を行なう企業。

ベンチャー企業が、戦後の日本経済の動きと深く関わっていることが理解できましたか。現在は、アベノミクスの下、新興市場に対する注目度は、これまでにない高まりをみせています。この新産業創出の気運を一過性のものに終わらせず、持続的な成長につなげるべく、官民をあげた支援が行なわれているところです。

3)産・学・官。得意分野を活かしたベンチャー支援策

これからの日本経済と深く関わるベンチャー企業の育成は、銀行だけの仕事ではありません。産・学・官、それぞれの分野で多面的な支援が行なわれています。資料7をクリックしてください。

資料-07

「産・学・官」によるベンチャー支援

1)国による支援策

文部科学省では、2012年に新たなベンチャー支援施策「大学発新産業創出拠点プロジェクト制度(略称:START事業)」を開始し、ベンチャーの創業を後押ししているほか、大学の研究成果の事業化推進のため、国立大学が投資会社や投資ファンドに出資することを目標とした「国立大学に対する出資事業」を開始し、東京大学・京都大学・大阪大学・東北大学の4大学に対して、総額1,200億円の資金を拠出し、事業構築に取り組んでいます。

経済産業省では、文部科学省の支援より後のフェーズの大学発ベンチャーや大企業からのスピンオフベンチャーを含めた幅広い分野のベンチャー企業に対して、ベンチャーキャピタルによる支援事業を行っています。

また、官民ファンドの産業革新機構も大学発ベンチャーへの投資に積極的に取り組んでいます。

2)民間企業による支援策

大手企業に限らず、多くの中堅企業も社内ベンチャーを推進しています。特に、休眠特許や不採算部門を活性化して新企業を立ち上げるスタイルが多く見られます。

3)大学による支援策

大学の研究機関で開発した特許を新事業と結び付けるTLO(Technology License Office=技術移転機関)を、東京大学、慶応義塾大学、東京工業大学などで36機関を設立(2014年10月現在)(地域と連携した広域型を含みます)。大学の内外に“産学共同”を目的とした別会社があるスタイルとして注目され、国も予算面で支援しています。また、ベンチャー育成講座を開設しているか、開設を望んでいる大学は全国でかなりの数にのぼります。

産・学・官、それぞれのベンチャー支援策の特長についてよく理解してください。銀行が行なう「ベンチャーの発掘・育成」は、こうした支援策と密接に連携しているのです。

次は、いよいよ銀行によるベンチャー支援策を学びます。

#Step04これが、銀行のベンチャー支援策

いよいよ、銀行が行なうベンチャー支援の具体策について勉強します。資金面にとどまらない銀行のグループによる総合的な支援策を理解してください。

1)銀行だけに可能な、総合力によるベンチャー支援

銀行が行なうベンチャー支援策は、多彩な機能をもつグループ企業の総合力を活かしたプロジェクトです。資料8をクリックしてください。

資料-08

ベンチャー支援

これは、ベンチャー企業支援に動員される当行グループ企業の一覧と、その機能です。

三井住友銀行では、資金面のみならず、経営面、営業面でもトータルにグループ会社の力を結集して育成を行っています。

急成長を図るベンチャー企業が切実に求めるのは、事業資金です。しかし、いくら将来性のあるベンチャーといっても、簡単に資金面での支援ができるわけではありません。ここで資料9をクリックしてください。

資料-09

ベンチャーの成長曲線

これは、ベンチャー企業であるB社と、ベンチャー企業ではないA社の成長曲線をモデル化したものです。A社の業況は横バイ状態が続いていますが、過去の業績推移などから相応に安定した営業基盤を有しているものと思われ、将来の業況は(A)のように推測されます。一方B社は急成長を遂げていますが、マーケットの変化などさまざまな要因により、将来の業況は大きくブレる(B)可能性があります。A社と比較すれば業歴が浅い分、事業基盤の整備・確立が不十分で、外的環境の変化などのショックに対する耐性が弱いと考えられます。

企業が安定期に入っていれば、事業による将来のキャッシュフローや予想損失額が予測できますから、信用リスクを考慮した貸出ができます(くわしくは「リスクマネジメント」ゼミを参照してください)。しかし、ベンチャー期の企業は事業化にともなうリスクが大きすぎるため、銀行は簡単に貸出を行なうことができません。それでは、ベンチャー企業への資金面の支援はできないのでしょうか?だいじょうぶ、他のベンチャー支援機関と連携した様々な資金支援スキームがあります。

2)知恵と人の支援も欠かせない

銀行によるベンチャー支援は、事業資金面だけにとどまりません。経営に不可欠の知恵と人の支援も積極的に行なっています。再び資料8をクリックしてください。

資料-08

ベンチャー支援

これは、ベンチャー企業支援に動員される当行グループ企業の一覧と、その機能です。

三井住友銀行では、資金面のみならず、経営面、営業面でもトータルにグループ会社の力を結集して育成を行っています。

こうした総合的な支援策により、銀行は“明日の大企業”を育成します。ベンチャー支援とは、銀行にとっても総合力をフルに使う大事業であることがわかりますね。

さて、こうした総合力を、銀行はどんな企業に投入するべきでしょう。

次は、ベンチャー企業の発掘についてです。

#Step05ベンチャー企業を見つけるには?

支援すべきベンチャー企業の発掘は、銀行にとってリスクと表裏一体の実に難しい作業です。ここでは、ベンチャー企業の将来性を見極める簡単なチェックポイントを勉強して、1時限目を終えましょう。

1)営業店に集まる、成長企業の候補先

“ベンチャー企業の発掘は難しい”、これは、企業の育成支援を担当している私の率直な意見です。STEP2でも勉強したように、ベンチャーの成長のスタイルは多様であり、単純なモデルではとらえきれません。また、社会に何万社も存在する企業の中から独創的・革新的な商品・サービスを持つベンチャー企業を発掘することは、海岸の砂の中から砂金を探し出すようなものです。でも、方法はあります。一つは、銀行の営業店にアンテナを立てておく方法です。銀行では営業店網を広く張り巡らせており、営業店の担当者が訪問した企業、来店した企業、あるいはお取引先より紹介を受けた企業などの中から、ベンチャー企業の候補先を本部の担当セクションに報告。情報を集中し、そこで本当に有望な先かどうかの目利きを行うわけです。

2)専門家の“目利き”により事業の将来性を予測する

先ほども触れましたが、こうした有望な企業についての情報は、本部の担当セクションに集約され、その中から有望な企業の“目利き”が行われています。この“目利き”とは、簡単にいえばその企業がどれだけの将来性と事業リスクを持つのかを色々な調査を行い、予測することです。そのチェックポイントとして、(1)経営者の資質、(2)技術やサービスの新規性、(3)市場性などがあげられます。さらに分野によっては、大学、企業などの技術評価機関の協力も得ながら、“目利き”を行っていくこともあります。

当行の場合、こうした評価機関としてご協力いただける数多くのお客さまとお取引があることから、様々なベンチャー企業に対応することが可能なわけです。STEP4で銀行の支援体制を説明しましたが、これも広い意味でとらえると支援体制の一部であり、バックヤードの厚さといえるでしょう。

銀行では、こうした“目利き”が行われ、将来有望なベンチャー企業を支援しています。なお、この“目利き”には相応の経験が必要と考えられますが、その辺りについては、3時限目で詳しく勉強しましょう。

3)連携プレーによるベンチャー支援

ベンチャー支援は銀行だけではなく、監査法人や証券会社、信託銀行なども行っており、その仲間たちと連携することも一般的です。他の仲間がそれぞれの得意分野において発掘した元気なベンチャー企業に別の仲間が自分の得意分野を生かし、一緒に支援していくわけです。

したがって、こうした仲間がたくさんいることも、ベンチャー発掘・育成における銀行の実力を決める一つの要素だといえると思います。

企業育成支援のファーストステージ「ベンチャー発掘・育成」の基礎知識はここで終了です。2時限目のテーマ「株式公開」に備えて、ここで考えておいてほしい課題を出します。

【課題1】

いま、ベンチャー期を終え、「株式公開」のステップへ進もうとする企業があります。発行済株式数が600万株の場合、この企業が公開後も経営安定化を図るために、一般に必要とされている安定株式数は何株以上でしょう。

ヒントは、会社法に定められた「特別決議」です。六法を開いて調べてみてください。解答は、次の2時限目で明らかにします。

まとめ

これで1時限目は終了です。

ベンチャーとは何か?なぜベンチャーを支援するのか?そして銀行ならではの総合的な支援スキームがわかりましたか。実践的なスキルについては、3時限目でより詳しく勉強します。ここでは、ベンチャー発掘・育成の大ワクについて理解してください。次の時間では、企業の成長段階の次のステージ「株式公開」について講義をすすめます。2時限目も、がんばって受講してください。

課題を、忘れずに考えておいてください。

【課題1】

いま、ベンチャー期を終え、「株式公開」のステップへ進もうとする企業があります。発行済株式数が600万株の場合、この企業が公開後も経営安定化を図るために、一般に必要とされている安定株式数は何株以上でしょう。